あした

お家を出てから1歩2歩って数える。小学校の校門に着くまでちゃんと数える。たまにわかんなくなる時もあるけどわかんなくなったら、まあいっか、ってなる。いつもだいたい800歩から820歩くらい。 

帰り道は数えない。だって帰り道は拾わなきゃいけないものがあるからね。棒のやつ。それをお父さんに渡すと、よくやったな、いい子だって褒めてくれる。ちょっとだけ指に変なにおいがつくけど気になんない。手を洗えばすぐに消えて石鹸のにおいがするからね。

棒のやつにはいろんな種類があって、長いやつとか、短いやつとか、茶色い部分があるやつ、変なマークがついてるやつ。本当にいろいろある。全部違う時もある。

でもたまに拾ってこないと、お父さんは怒る。グーパンチされるときもある。だから帰り道は、朝みたいに歩くの数えない。忘れちゃうから。

公園にはたくさんあるってお父さんが教えてくれた。学校がない日は公園で遊びながらそれを見つけるんだ。本当にたくさんあって楽しいんだよ。お父さん喜ぶだろうなっていつも思う。それと一緒に三つ葉のクローバーが見つけられたとき、僕はラッキーだって思う。棒のやつは右のポッケに入れて三つ葉のクローバーは左のポッケに入れてルンルン。

でも、先生が言っていたけどこれからオリンピックっていう大会があるから、僕が住んでいる街も公園もどんどんきれいになるんだって。そしたら僕が拾ってるものも全部なくなっちゃうかもしれないんだって。嫌だな。お父さんが怒って悲しい顔しちゃうよ。

お父さんが悲しい顔すると僕も悲しい。お父さんが嬉しそうだと僕も嬉しい。だって、僕を褒めてくれるのはお父さんしかいないんだ。

明日は扇風機の前でゔぁーってやりたいな。