ゆうた

コインランドリーのパイプ椅子に座り、目の前のテーブルに置いてあった自由にお使いくださいという紙が貼られた小さなカゴから洗濯ばさみを手に取った。それで左手の人差し指の爪あたりを挟み、周りを見渡した。薄汚れた茶色の棚に巻数がばらばらの漫画。その横には忘れ物用の洗濯物入れ。白を基調とした壁。掛け時計。洗濯機が6台。1台は僕が使用している。

蛍光灯が1つチカチカと切れそうだったのでポケットにあったレシートの裏に、蛍光灯が切れそうです、と書いてテーブルの上に置いた。

しばらくすると腰の曲がったおじいさんが入ってきた。僕が会釈すると彼は「ゆうた、ゆうたか」と聞いてきた。きっと誰かと勘違いしてるんだろうと思い「違いますよ」と答えたが彼はまた「ゆうた、ゆうたか」と言った。

「そうです、ゆうたです」と答えると、「おまえはゆうだじゃないだろ」とあきれられた。