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しゃぶしゃぶ

数年前、住んでいる街の駅前に屋台のラーメン屋があったので1度だけ入ったことがある。

帰る道すがら何度かその屋台を目にしたことはあったけれど、小心者の僕としては客の距離が近いし食べてるところを誰かに見られるのも嫌なので見て見ぬ振りをしていた。ただその日だけは、客が1人もいなかったので少し勇気を出して入ってみた。

店主は意外にも若く、若かりし頃の加山雄三に少し似ていてハツラツとしていた。席は4つで左端に座った。味噌ラーメンとビールを頼んだらすぐに出てきて、カップラーメンよりも早いなと思ったことを覚えている。そこまで腹が減っていたわけでもないし自分以外誰もいなかったのであまり急がずに食べた。すると間もなくして自分と同世代くらいの男性の客が右端に座った。その男性は店主に「いつもの」と頼み、すごい速さで醤油ラーメンか何かを平らげて出て行った。店主に「あの人速かったですね」と言うと、店主はナルトをつまみ食いして「まぁ、人生ってのはさ、俺たちが思ってるより遥かに早いスピードで終わんだよ。あっという間だぞ」と言ってニコっと笑った。味噌ラーメンの味はまあまあだった。

 

それから数日後、暇つぶしに新聞を読んでいたら「屋台でドラッグ販売」という見出しの記事があった。まさかと思い、よくよく読んでみると、数日前、味噌ラーメンを食べたあの屋台だった。どういう手法で売っていたかというと、スープを全て飲み干すと器の底にパッケージされたシャブがあるという仕組みだったそうだ。

ラーメンもシャブみたいなものなのに、そのうえ本物のシャブって、しゃぶしゃぶじゃねぇかよというくだらないダジャレを思いつき、僕はゲラゲラ笑った。